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2025年12月19日 ページを公開しました

ウポポイ開業5周年記念 多文化共生ウィーク特別企画
「ウケㇱコㇿ~紡がれるアイヌ伝統芸能と歌舞伎~」開催

2026年2月1日(日) 開演13:00
(開場12:30 終演15:00予定) 

会場 ウエカリ チセ(体験交流ホール
料金 観覧無料 ※別途ウポポイ入園料が必要です。

アイヌ文化と歌舞伎の間には、あまり知られていない関わりがあります。その繋がりからは、アイヌ民族と和人社会の交易の歴史が垣間見えます。ウポポイとして初めての歌舞伎とのコラボレーションとなる本公演「ウケㇱコㇿ(アイヌ語で相続する、受け継ぐの意)」では、歌舞伎俳優にして人間国宝の五代目坂東玉三郎丈をゲストに迎え、その歴史を紐解くとともに、アイヌ民族の伝統芸能と歌舞伎という二つの伝統芸能をお楽しみいただきます。


歌舞伎にアイヌ民族の衣服?!

歌舞伎の三大名作の一つと言われる「義経千本桜」という演目に、アイヌ民族の衣服であるアットゥㇱを着た人物が登場するのをご存じでしょうか?
江戸や上方を代表する芸能である歌舞伎に、遠く離れたアイヌ民族の衣装が登場するのはなぜなのか、その秘密を紐解いてみましょう。
その人物は、「義経千本桜」の二段目・渡海屋に登場する船問屋の主人・渡海屋銀平(実は新中納言知盛) 。アイヌ文様を施した着物「厚司(あつし) 」をまとって現れます。(写真1)

この衣装は、「アットゥㇱ」と呼ばれるアイヌ民族の伝統的な着物が原型となっています。アットゥㇱは、オヒョウなどの樹木の内皮を使って織り上げられるアイヌ民族独特の布地であり、また、その布を使って作られた着物のことも指します。その着物には、刺繍や切伏などによりアイヌ文様の装飾が施されています。
アットゥㇱはアイヌ民族にとっては生活や儀礼に欠かすことのできない衣服でしたが、耐水性、速乾性に優れた特性を持っていたので、漁業、海運など海の仕事に従事する和人たちも好んで着用するようになりました。18世紀以降、多くのアットゥㇱが交易品として和人社会にもたらされ「厚司」と呼ばれるようになったのです。(写真2)

【松竹大谷図書館所蔵】『義経千本桜』

(写真1) 「義経千本桜」で渡海屋銀平を演じる六代目尾上菊五郎 松竹大谷図書館所蔵
アイヌ文様のある「厚司」をまとっている。©松竹

アットゥㇱ

(写真2) アットゥシ(樹皮衣)東京国立博物館蔵

和人の船頭向けに作られたアットゥシと考えられ、袖が広袖で袂のあるものに仕立てられている。
出典:国立文化財機構所蔵品統合検索システム

北前船が運んだアイヌ文化

「北前船」は、江戸時代中期から明治にかけて、北海道から日本海側の各地を経由して西に進み、瀬戸内海を通って大阪までを航行した商船です。北海道と本州を結ぶ航路は17世紀から整備されていき、18世紀中頃に各地で商品の売買を繰り返す「北前船」へと発展しました。

北前船は主にニシンや昆布など北海道の海産物を本州各地へと運んでいましたが、そのほかにもさまざまな物資を運びました。

アイヌ民族が生産したアットゥㇱもまた、和人社会へ移出される産品のひとつだったのです。北前船は寄港する各地にアットゥㇱをもたらし、その結果、東北・北陸の日本海沿岸で漁業労働の場において厚司として数多く着用されることとなりました。

そして、北前船の船乗りたち自身もまた厚司を身に着けていました。北前船の船乗りたちが厚司を着ている様子が描かれた絵馬の存在が、北陸地方などでいくつも確認されています。(写真3)

船乗りたちは機能性に優れた厚司を好んで身に着けましたが、厚司は実用性のみならず、その華やかな装飾とあいまって彼らのステイタスシンボルとなったのです。

両徳丸図額(船絵馬)
(写真3) 両徳丸図額(船絵馬) 白山神社所蔵(加賀市指定文化財)
北前船を描いた絵馬にアットゥㇱを着た乗組員の姿が描かれている。

北前船から歌舞伎へ

歌舞伎「義経千本桜」の初演は1747年。まさに北前船による北方交易が盛んになっていく時代でした。
北前船の船頭は、命の危険を伴う仕事でしたが、同時に自らの才覚で一獲千金を狙うことのできる職業でもありました。当時の人々にとっては、たくましくて男らしく、夢のある「カッコいい」存在だったに違いありません。また、ことに江戸や上方に住む人々にとっては、見たことのない遠く離れた地を感じさせてくれるエキゾチックな存在でもあったことでしょう。
そして、「厚司」はそうした存在を象徴するアイコンであると同時に、美的エキゾチシズムの象徴でもあったと言えるでしょう。
だからこそ、船問屋の主人であり、実は新中納言知盛の仮の姿である渡海屋銀平という人物を表現するにふさわしい舞台衣装として、厚司が選ばれたのではないでしょうか。(写真4)

二代歌川国輝「義経千本桜 二段目ノ中 渡海屋」(部分) 
(写真4) 二代歌川国輝「義経千本桜 二段目ノ中 渡海屋」(部分) 東京都立中央図書館所蔵
江戸時代に描かれた浮世絵。「厚司」をまとった歌舞伎役者が描かれている。

交易の民、アイヌ民族

古来、アイヌ民族は周辺のさまざまな民族と交易を行うことで、多種多様な物資を手に入れ、豊かな文化を育んできました。同時に、この交易によってアイヌ民族から周辺の民族にも多くの物資がもたらされました。
和人社会との交易の形は時代とともに変化し、アイヌ民族にとって長い苦難の時代もありました。しかし、そのような中でも、アイヌ民族が入手、生産したさまざまなものは、「交易」を通して日本の社会と文化に影響を与え続けてきたのです。
北前船で運ばれた昆布が日本の食文化に大きな影響を与えたことは言うに及ばず、ニシンは魚肥として西日本における綿花や藍の生産拡大をもたらし、江戸時代後期の日本の衣服文化の発展を支えました。
そして、歌舞伎の中に登場するアットゥㇱもまた、「もの」の交易が「文化」に影響を与えた事例のひとつなのです。
本公演は、こうした歴史を背景に、アイヌ民族の「交易」がはたした役割を皆様に知っていただき、また同時に、これからの歌舞伎とアイヌ芸能の新たな交流を目指すものです。

公演内容

開催日 2026年2月1日(日)
12:30開場13:00開演(15:00頃終演予定)
会場ウエカリ チセ(体験交流ホール)
料金観覧無料 ※別途ウポポイ入園料が必要です。

第一部

トークセッション-伝統と革新~交易の向こうにみえてくるもの- 13:00~

現代歌舞伎界の至宝・坂東玉三郎と国立アイヌ民族博物館 館長・野本正博が、アイヌ民族と和人社会の交易が文化にもたらした影響や、アイヌ文化と歌舞伎が受け継いできたものの本質とそれぞれの今後について語ります。

坂東玉三郎氏

人間国宝・歌舞伎俳優 
坂東玉三郎

1957年12月東横ホール『寺子屋』の小太郎で坂東喜の字を名のり初舞台。1964年6月十四代目守田勘弥の養子となり、歌舞伎座『心中刃は氷の朔日』のおたまほかで五代目坂東玉三郎を襲名。泉鏡花の唯美的な世界の舞台化にも意欲的で、代表作の『天守物語』を始め数々の優れた舞台を創りあげてきた。また歌舞伎の枠を超えて、世界の芸術家まで大きな影響を与え、賞賛を得てきた。若くしてニューヨークのメトロポリタン歌劇場に招聘されて『鷺娘』を踊って絶賛されたのをはじめ、アンジェイ・ワイダやダニエル・シュミット、ヨーヨー・マなど世界の超一流の芸術家たちと多彩なコラボレーションを展開し、国際的に活躍。映画監督としても独自の映像美を創造。2012年9月に、歌舞伎女方として5人目となる重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定、また2013年にはフランス芸術文化章最高章「コマンドゥール」を受章した。

2014年紫綬褒章、2016年日本芸術院賞・恩賜賞、2018年松尾芸能賞・大賞
2019年岩谷時子賞、2019年高松宮殿下記念世界文化賞、2019年文化功労者認定、2019年日本藝術院会員など

公演に寄せて

今回初めてウポポイ(民族共生象徴空間)に伺わせていただきます。この催しを通じて、今の世の中で、人間同士が会うということが、どんなに大切なことか、文化がどんなに大切なことかと改めて理解できると思います。 皆様と心を通わせられることを楽しみにしております

野本正博氏

国立アイヌ民族博物館館長
野本正博

1963年生まれ、白老町出身。1985年よりポロトコタン(財団法人アイヌ民族博物館)に勤務。事業部学芸課長を経て、2012年に常務理事兼館長に就任。ポロトコタンの旧アイヌ民族博物館は地元白老のアイヌが設立・運営した博物館で、アイヌ文化の伝承と人材育成の基盤を作った。
2012年から国立アイヌ民族博物館の構想づくりに委員として携わり、2018年4月から公益財団法人アイヌ民族文化財団(以下、同財団)民族共生象徴空間運営本部文化振興・体験交流部長、2023年6月から同財団理事兼民族共生象徴空間運営本部副本部長。
国内外のアイヌ文化展の企画・制作に携わり、自ら展示作品を制作。スミソニアン国立自然史博物館特別展「AINU:Spirit of Northern People」(1999 年)の展示制作部門に参加。現在も同館の北太平洋諸民族の文化と交流史の参考資料として、アイヌの交易船「イタオマチㇷ゚(板綴舟)」が展示されている。
ポンレ:レタンレㇰ(※ポンレはウポポイで使用しているアイヌ語のニックネーム)

第二部

伝統芸能の披露 14:00~

ウポポイ 伝統芸能上演「イノミ」

伝統芸能上演イノミ

アイヌ民族はあらゆるものに魂が宿ると考え、人間にはない力を持つものをカムイと呼びます。カムイは、彼らの世界では人間と同じような姿で暮らしており、人間の世界に訪れるときに様々なものの姿になって現れるといいます。イヨマンテ(熊の霊送りの儀礼)は、そのカムイに感謝の祈りを捧げ、酒や歌、踊りでもてなし、お土産とともにカムイの世界へ送り帰す重要な儀礼です。アイヌ民族の芸能が祈りと共にあることを本舞台で演じます。

坂東玉三郎 地唄舞「残月」

地唄舞「残月」

天明・寛政期に大阪で活躍し、「越後獅子」などの名曲を生み出した峰崎勾当による作品。勾当の門人であり、若くして世を去った松屋某の娘(法名「残月信女」)を偲んで作られた追善曲です。娘は、箏や三弦の名手であったと伝えられています。短く儚い生涯を終えた娘と、月の情景とを重ねて描いた地唄の名曲。琴の音が響く静寂の中で、朧夜に淡く光る月のように浮かび上がる玉三郎の舞姿は、儚くも美しい夢を見ているかのようです。


観覧応募

事前にウェブ申込が必要です。下記の受付フォームより必要事項入力の上、お申込みください。同行者含め2名様までご応募いただけます。当選者の方に事務局(upopoy@smsinbox.jp)より2026年1月19日(月)までに当選メールをお送りいたします。1月26日(月)以降で当日受付用の二次元コードをお送りします。

  • 車椅子でご来場の方は、お申込み時にその旨をご明記ください。
  • メールのドメイン指定受信など、受信制限機能を利用されている方は、事務局からのメールを受信できるようにあらかじめ設定してください。

受付期間

2025年12月19日(金)14:00~2026年1月12日(月・祝)23:59

注意事項

・本公演では臨時の追加席をご用意しておりますが、前方フロア席2・3列目(下図赤色の座席)は舞台の一部が見えづらい場合がございます。
・当日はメディア取材が入り、会場内の様子を撮影する場合があります。撮影された写真や映像は報道・広報等に使用されることがあります。なお、お客様による録音・撮影は固くお断りいたします。
・事前予告なくイベントの中止、または一部内容等を変更する場合がございます。

交流ホール座席表

応募受付に関するお問い合わせ

upopoy@smsinbox.jp

※事務局へのお問合せはメールのみの対応となります(電話による受付は行っておりません)。
※対応時間は平日10:00~17:00です。ただし、年末年始休業期間(12月27日~1月4日)は対応を休止いたします。休業期間中に頂いたお問い合わせは、1月5日以降、順次ご返信いたしますのでご了承ください。

その他

当日はウポポイ園内でパブリックビューイングを実施いたします。

【チラシ】「ウケㇱコㇿ~紡がれるアイヌ伝統芸能と歌舞伎~」チラシ(PDFファイル3.89MB)

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トゥレッポん
トゥレッポん

ウポポイ(民族共生象徴空間)は、
アイヌ文化の復興・創造等の
ナショナルセンターです。

アイヌ古式舞踊の上演や伝統芸能体験、食文化体験や伝統工芸品の製作体験等を通じてアイヌ文化を体感。 豊かな自然に囲まれた、アイヌ文化が息づく憩いの場。

札幌から約1時間、新千歳空港から約40分、JR白老駅から徒歩約10分

ウポポイ(民族共生象徴空間)
〒059‐0902 北海道白老郡白老町若草町2丁目3
545 194 852
マップコードに対応したカーナビ等にコードを入力するだけで地点を表示できます。

「マップコード」および「MAPCODE」は(株)デンソーの登録商標です。

営業時間

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閉園日

月曜および12月29日~1月5日、2月28日~3月9日 ※月曜が祝日または休日の場合は翌日以降の平日に閉園 ※但し4月28日、8月12日、9月16日、9月22日は開園

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