ウポポイスタッフインタビュー
アイヌ文化を伝える、私たちの想い
教育
子どもたちに伝えたい
ヤイコシラㇺスイパ ハニ
文化振興部体験教育課
メトット
子どもたちに伝えたい
ヤイコシラㇺスイパ ハニ
取材・撮影(2022年3月)
キッズプログラム担当として、子どもたちの心を育てる教育プログラムに取り組む
〈メトットさん〉にお話を伺いました。
私の“ラㇺ(心)” が大きく動いた、カナダでの交流
アイヌ文化に関わる仕事がしたいと思ったきっかけ
アイヌの家庭に育ち、幼いころから祖母や母親に連れられて儀礼などに参加をしてきました。中学2年の時、国際交流事業でカナダへ行く機会に恵まれ、様々な国の人たちや現地のハイダ族の方々と歌や踊りで交流をしました。多感な時期に世界の先住民文化を肌で感じることができたことは、アイヌ文化を再認識する貴重な経験となりました。このカナダでの交流体験がきっかけとなり、「将来はアイヌ文化を伝える仕事がしたい!」と強く思うようになりました。ある日、私の地元の子どもたちにムックリを教える機会があり、とても楽しそうに興味を持ってくれているのを感じたことで「子どもたちに私の知っていること、経験してきたことを伝えていきたい」と具体的な目標が定まり、今に至るまで子どもたちにアイヌ文化を伝える仕事を続けています。娘ができた今は、子どもたちに“ラㇺ(心)”を伝える大切さをより一層感じています。世界には様々な人がいて当たり前なんだということを、自分の経験を通してしっかりと伝えていきたいと思っています。
「考える」ということは
「自分で自分の“ラㇺ(心)” を動かす」ということ
ウポポイでは、アイヌ文化をどのように伝えているか?
私がウポポイで伝承しているのは、アイヌ文化の“気持ち”や“想い”の部分です。アイヌのルーツを持つ私の経験や、私の生まれ育った地元で教えてもらったことをベースに、歌や踊り、他プログラムのチームと連携しながら“想い”を伝えていきたいですね。
ウポポイでは、子どもたちや親子に向けてわかりやすくアイヌ文化を伝えています。その中のひとつに紙芝居があるのですが「ヤイコシラㇺスイパ ハニ~かんがえてね~」というタイトルがついています。アイヌ語の“ヤイコシラㇺスイパ”とは「考える」という意味で、言葉を分解すると「自分の心を揺らす」ということ。子どもたちには、アイヌ文化に触れたことで自分の心を揺らしてじっくり考えてほしいと思っています。子どもたちだけでは理解するのが難しいので、親の力も必要です。親子で一緒にアイヌ文化を知り、感じ、そして考えてほしい。“世の中にはいろんな人がいる”ということや、人と物とのつながりなどプログラムを通して“気持ち”や“想い”を伝えています。家族でウポポイにきたことで、少しでも心を揺らし、自分事として捉え、家に帰ってからも家族でたくさんの話しをしてもらいたいですね。
みんな違って、みんな良い。それが、普通。
子どもたちに何を伝え、感じてほしいか
「世界には、様々な人がいて当たり前」。これが私たちキッズチームのコンセプトです。アイヌ文化の仕事に携わり始めてから、私が伝えたいことは一貫して、目には見えない「想い」の部分です。幼いころからたくさんの経験をし、アイヌ文化と関わってきた私だからこそ伝えられること、伝えていくことがアイヌとして生まれてきた私の使命だと思っています。アイヌが特別な訳ではありません。世界にはいろんな人がいて当たり前なんだということ、それが普通なんだということを知ってほしいと思っています。アイヌ文化は、心を豊かにしてくれる文化です。ウポポイでアイヌ文化を知ることで、いろんなことに気が付いてほしい。アイヌの文様や歌や踊りも大事です。でもそれらはひとりひとりの「想い」が形となり、そこには必ず「想い」が込められているということ。見たり触れたりできない「想い」を伝えるのはとても難しいことですが、地道に伝え続けていきたいと思っています。
アイヌ文化を伝える、私達の思い
ウポポイスタッフインタビュー
【ポンレ】 メトット
北海道鵡川町出身。アイヌの家庭で育ち、大学の学芸員課程ではアイヌについて学ぶ。2011年より、しらおいイオル事務所チキサニに就職しアイヌ文化に携わる。その後アイヌ民族博物館に就職。2018年より公益財団法人アイヌ民族文化財団に所属し、ウポポイではキッズプログラムを担当。一貫して子どもたちへの教育に携わり続けている。
ポンレ=アイヌ語のニックネーム
アイヌ語で、「めい(娘の名前)のお母さん」の意。
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