ウポポイスタッフインタビュー

アイヌ文化を伝える、私たちの想い isoytak イソイタㇰ

伝統芸能

白老に伝わる
イヨマンテ リㇺセを踊り継ぐ

文化振興部伝統芸能課
ポロナイ

白老に伝わる
イヨマンテ リㇺセを踊り継ぐ

取材・撮影(2022年3月)

ウポポイの体験交流ホールや道内外のイベントで歌や踊りの伝統芸能を披露している
〈ポロナイさん〉にお話を伺いました。

踊りの衣装のひとつ”マタンプㇱ”(鉢巻)は、白老に来た当初に自分で刺繍したもの

オーストラリアで初めて知る「アイヌ」

アイヌに興味を持ったきっかけ

四国の香川県で生まれ育った私にとって、アイヌとは歴史の教科書で目にした程度のものでした。高校生の時にオーストラリアの先住民族・アボリジニに興味を持ち、名古屋の大学に在学中、オーストラリアにアボリジニの勉強をするため留学しました。留学先の先生に「アイヌとアボリジニを比較したレポートを書いてはどうか」と勧められた時、自分は日本に住んでいながらアイヌのことを全く知らないことに気が付きました。帰国後はアイヌについての勉強をし、「アイヌ文化の傍で働きたい!」と北海道移住を考えていた時に、ウポポイで採用募集があることを知りました。アイヌのルーツが無い私でも働くことが出来るのだろうか・・と思いながらも思い切って応募したんです(笑)。晴れてウポポイで働けることになり、研修で伝統芸能の練習を見学し、初めてアイヌの歌や踊りに触れました。その時の感動は今でも忘れられません。アイヌの伝統芸能は、能や歌舞伎などと同様に誰でもがやれるものではないと思っていたので、自分が伝統芸能の担当になった時には驚きました。「私が踊ってよいのだろうか?」という不安も感じましたが、「あの舞踊を踊ることができるんだ」という気持ちの方が強かったですね。その後は特訓を重ね、数か月後には大学時代に住んでいた名古屋で初公演を行いました。見に来てくれた友人には、私をきっかけにアイヌ文化を少しでも知ってもらえたと思います。アイヌのルーツがない私でもアイヌ文化に携わることができることを知ってもらい、広くアイヌ文化をつなげることができたらうれしいですね。それもアイヌではない私の使命なのかなと感じています。

適度な緊張感の中で行われる、舞台に上がる前のルーティン。体験交流ホール舞台袖にて。

イヨマンテ リㇺセ が持つ、人々を魅了する不思議な力

自分にとって特別な想いのある踊り

初めて教えてもらった「イヨマンテ リㇺセ」は私にとって特別な踊りです。この踊りは、育てたクマなどの霊魂をカムイ※の世界に送り返す儀礼の中で踊る輪踊りです。 公演の最後に披露する踊りでもあり、祝いの席や楽しい席でも踊られています。全員で踊って声を出すので迫力があり、”ホロㇿセ”という巻き舌の唱法が入ったりと、楽しめる要素がたくさんあります。とても印象に残っているのは2020年7月、ウポポイが開業する1週間前にスタッフ全員で決起集会を行いました。その最後に事務職員の方も一緒に全員で輪になり「イヨマンテ リㇺセ」を踊ったんです。とても大きな輪ができ、スタッフ全員の一体感も高めたこの踊りは、私の中で特別なものです。初めてこの踊りを見た時の感動やワクワク感をたくさんの人達に感じてもらいたいという気持ちで毎日踊っています。アイヌの言葉もそうですが、踊りも北海道内の各地域で違っていて、どの地域の踊りも本当にかっこいいんです。私たちの踊りがきっかけとなって、アイヌ文化に興味を持っていただけるよう、気持ちを込めて日々舞台に上がっています。

※カムイ:人間の周りに存在するさまざまな生き物や事象のうち人間にとって重要な働きをするもの、強い影響があるもの

「ウエカリ チセ(体験交流ホール)」で上演されている《シノッ ~アイヌの歌・踊り・語り~》

アイヌ文化が教えてくれたこと

ポロナイさんにとって「アイヌ」とは?

私の「人生のターニングポイント」です。アイヌを知らなければ北海道に移住することもなかったと思いますし、今の自分があるのはアイヌ文化に出会ったおかげです。私はアボリジニのことを勉強するためにオーストラリアへ行き、世界に目を向けていましたが、アイヌを知ったことで、自分の身近な物事にしっかりと目を向けられるようになりました。アイヌ文化と自分の文化の共通点を見つけてみたり、自分自身のルーツについても深く考える機会を与えてくれました。私にとって、ターニングポイントとなったアイヌ文化を多くの方にも知ってもらいたい。そして、アイヌの文様や踊りを見て終わるのではなく、アイヌの精神世界も知ることで、自分自身を深く見つめていく。ウポポイはそのお手伝いができる場所になるのが理想ではないかと考えながらアイヌ文化と向き合っています。

昨年から始まった〈オンラインツアー〉ではガイド役を担い、広く海外へもアイヌ文化を伝えている

アイヌ文化を伝える、私達の思い

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ウポポイスタッフインタビュー

【ポンレ】 ポロナイ

香川県で生まれ育つ。名古屋の大学へ在学中にオーストラリアへ留学し、アボリジニについて学ぶ。帰国後アイヌをテーマに卒業研究を行う。大学卒業後は北海道への移住を決めウポポイの職員募集へ応募。2019年5月より公益財団法人アイヌ民族文化財団に所属。伝統芸能の歌や踊りをウポポイや国内外のイベントで披露。2021年よりオンラインツアーのガイドを担当し、アイヌ文化を多くの方に伝えている。

ポンレ=アイヌ語のニックネーム
大きな1本の河のように太く長くアイヌ文化に携わるという願いを込めて

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